【雑記ノート】(おまけコーナーを作成中!)

2012年5月13日日曜日

詩集『向こう側』

詩集『向こう側』
             葵夏葉


  探しモノ

見えるときに見落として

見えないときに探して

そうして

いつの間にか

大事なモノが消えていく

それでも

そこにあるモノないモノ

全部あなたが

本当は

知っていること



  心配

心配されることに、

なんの意味がある?

結局は何もしてくれない。

そんな他人事。

上辺だけの親切。

同情するなら、金をくれ。


そんな今。


けれど、俺は見た。

公園で泣いている女の子を。

大丈夫か?

そう言って傷を洗って拭いてあげる。

他の友達も来て、

だいじょうぶ?

そう心配して、背をなでる。

すると、

女の子は泣き止んで、笑った。

ああ、そうか。

俺は忘れていた。

この想いを。


  言葉の縛り

『幸せ』

その言葉を知らなければ、

幸せになれないのかな?

『不幸』

その言葉を知っているから、

不幸になるのかな?

わからない。

でもね、

不幸だって嘆いているアナタも尊い。

幸せだって喜んでいるダレカも尊い。

自分の人生を、

その小さな言葉に当てないで。


おふくろの味

今日は久し振りに

おふくろの作ってくれていた

あの思い出の味噌汁を作った

夏は汗をかき

冬は温まった

おふくろの作る味噌汁は

いつだって同じ味

俺の作った味噌汁は

なんだか今日は

しょっぱかった

塩の分量は間違っていないのに


  天国からの詩

泣かないで

悲しまないで

そう言ってあげられないのは

ツライけど

あなたの側にいられない

私はもっと

ツライから


だから


泣かないで

悲しまないで

そう言ってくれるのは

嬉しいから

あなたの側を離れていても

私はそれでも

嬉しいんだよ


  アナタのお母さん

私は、君のお母さんにはなれないかもしれない。

私は、君のことを何一つ理解できていないのかもしれない。

でも、私は、

でも、私は、

今の君を見て、

大きくなったねって言いたい。

変なことかもしれない。

でも、君は私の子供だと、

目を合わせて言いたい。



私は、君のお母さんにはなれなかったかもしれない。

私は、君のことを何一つ見てあげられなかったかもしれない。

でも、私は、

でも、私は、

今の君を見て、

元気で生きてって言いたい。

変なことかもしれない。

でも、君は私の子供だと、

しっかりと抱きしめてあげたい。



あなたに言ってあげたい。

伝えたい。

きっと、あなたの母さんは、

あなたを生んで幸せだったと。

どうしてって訊かないでよ。

あたながこんなに

悲しい顔をしてるんだもの。


向こう側

僕は放課後になると、

いつも一階の理科室前を通る。

左端の窓際でいつも一人の女子が、

ぼんやりと向こう側を見ているから。



入口から外を眺めてみると、

そこは丁度、体育館の一階があった。

窓を閉めていても聴こえる、

きっと

僕にとっては、ざわめき。

彼女にとっては、清き旋律。

きっと

向こう側は明るくて、

此方側が見えていない。



五回目だったろうか。

僕は決心して

彼女に話しかけた。



辺りが暗色に染まりつつある中で、

彼女の瞳だけが光を反射し、

胸の内を明かすように、

口元を緩めると、

名前と同時に、

指を差した。



彼女の目は

儚い夢を追う人に相応しく、

僕は彼女の美しさに見とれ、

もう心はいつしか、

彼女の側を望んでいた。



しかし、僕は知っている。

彼女が見つめるその先にいるのは、

僕より

背が高く、顔もよく、明るく、

全てのモノが僕とは

違うってことを。



ある日、彼女がいなかった。

だから、ふと、

彼女のように立ってみた。

すると、

笑う二人が見えた。



初めから、

僕と彼女は似ていた。

でも、もう、

彼女は向こう側の人間。



諦めて、彼女のへの贈り物を、

ゴミ箱に捨てようとしたとき、

彼女が此方側を見て

素敵な笑顔で、手を振った。



彼女には僕が見えていた。

その驚きは、

辺りの光を虹色に変えて、

瞳を潤した。

贈り物を捨てるのを止めて、

手を振った。



小さな贈り物は渡せたようだ。

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